生命の起源と宇宙生物学(アストロバイオロジー)


地球型惑星と生命の起源のイメージイラスト

わたしたち生命はどのようにして生まれてきたのでしょうか。

生命の起源をたどる手がかりが、宇宙にあります。宇宙に望遠鏡を向けることで、わたしたちの過去、現在、未来を研究することができるのです。

夜空には、多数の星々が光輝いています。それらの種類や年齢(進化段階)は実にさまざまです。無数の星々のなかには、私たちの太陽系が過去に経験したような状況にあるものも存在するでしょう。原始の地球を取り巻いていた環境に似たものも期待されます。

また、わたしたちが現在経験しているような、もしくは今後経験するであろう状況にある星々も存在するでしょう。

さらに、星や惑星がいままさに生まれつつある領域(星・惑星形成領域)は、太陽系や地球がどのように生まれてきたのかを調べる上で重要な情報を伝えてくれます。そして生体物質や生命の起源に関わる手がかりを得ることができます。下の図は星雲中での星の誕生のイメージイラストです。

星雲中での星の誕生のイメージイラスト

最初の生命は、いったいどこでどのように誕生したのでしょうか。宇宙科学においても非常に重大なテーマになっています。

一方、太陽系には地球を含めて8個の惑星が存在していますが、太陽系の外、別の星の周囲にも惑星が発見されています。これらは太陽系の外にある惑星という意味で「太陽系外惑星」と呼ばれています。略して「系外惑星」とも呼ばれます。生命が住める場所が、太陽系の外にも存在しうるということは、宇宙の生命、つまり地球外生命を考える上でも大きな発見となりました。

さらには、太陽系の外には、太陽系にはないような、実に様々なタイプの系外惑星が存在することがわかってきました。それらの惑星には多様な環境が広がっていることでしょう。生命との関わりもたいへん興味深い問題です。

スーパーアース(系外惑星)と地球型惑星のイメージイラスト

たとえば、地球と比べてひとまわり大きな系外惑星がいくつも見つかり始めています。それらはスーパーアースと呼ばれています。上の図は地球型惑星(左側)とスーパーアース(右側)のイメージイラストです。私たちの住む地球とは完全に同じではないわけです。いったいどのような惑星なのかを調べるために現在も研究が進められています。

私たち人類を含む生命は、いつ、どこで生まれ、そしてどうなっていくのでしょうか。また、われわれ地球上の生命以外にも、宇宙に生命は存在しているのでしょうか。宇宙全体を巻き込んで生命を総合的に研究する新しい学問、それが宇宙生物学(アストロバイオロジー)です。


オリオン大星雲における円偏光の巨大な広がりと生命のアミノ酸の鏡像異性体異常

オリオン大星雲は、地球からもっとも近い「大質量星形成領域」として知られています。この領域では太陽よりもずっと重い星が生まれています。加えて、そこでは多数の星が生まれつつあります。

この星雲を赤外線望遠鏡を用いて観測しました。その結果、オリオン大星雲の中心部に、円偏光という特殊な光が太陽系の400倍以上のサイズにまで広がっていることを初めて発見しました。

地球上の生命のタンパク質を構成するアミノ酸は、ほとんどが鏡像異性体の片方ばかりを使用しており(ホモキラリティ)、その起源はいまだよくわかっていません。大質量星形成領域に観測された円偏光が示唆するホモキラリティ、および生命の起源を議論しました。

下の図は、星雲中に広がる円偏光に、原始太陽系(左側)がさらされているイメージイラストです。

円偏光イメージイラスト
国立天文台プレスリリースでの画像のversion
  • 論文: T. Fukue et al. "Extended High Circular Polarization in the Orion Massive Star Forming Region: Implications for the Origin of Homochirality in the Solar System", Origins of Life and Evolution of Biospheres, 2010

星や惑星の誕生現場の研究 » : 太陽系や地球の誕生とは?

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