赤外線による宇宙観測、特に偏光を用いた研究


赤外線での星雲イメージイラスト

偏光とは?

光とは、電場と磁場の振動が空間を伝わっていく波です。光の進行方向に対して垂直に振動しながら伝わっていきます(横波)。

偏光とは、光の振動の方向が規則的な状態を指します。普通の光は、あらゆる方向に振動する光が混合していますが、たとえば星雲中の塵粒子に光が散乱されると偏光が生じます。

光の振動があるひとつの方向の場合、直線偏光と呼びます。

直線偏光のイメージ図

直線偏光のイメージイラスト

右下の矢印が光の振動方向です。赤い波の部分が光(電場)の振動を表します。

光の振動の軌跡が円を描く場合を円偏光と呼びます。右回り円偏光と左回り円偏光があります。

光が塵粒子などの散乱体によって散乱されると、その散乱体の特徴(光学的特性)に従い、光の偏光状態が変化します。宇宙の偏光研究は塵粒子の物理的性質や、星や惑星が生まれる領域の構造を明らかにすることに大きな力を発揮します。

現在、特に星や惑星が生まれる領域における偏光を研究しています。塵粒子の進化が惑星形成につながっていくため、その理解が重要です。


赤外線望遠鏡を用いた観測により、オリオン大星雲の広大な円偏光を発見

赤外線望遠鏡によるオリオン大星雲の観測から、円偏光という特殊な光が太陽系の400倍以上にも広がっていることを初めて発見しました。国立天文台プレスリリース「宇宙の特殊な光から地球上の生命の起源に新知見」にも解説を掲載しています。

  • 論文: T. Fukue et al. "Extended High Circular Polarization in the Orion Massive Star Forming Region: Implications for the Origin of Homochirality in the Solar System", Origins of Life and Evolution of Biospheres, 2010

星が生まれる場所での円偏光の生成メカニズムの研究

オリオン大星雲でも有名な、太陽よりもずっと重い星が生まれている場所での、観測で得られていた偏光データを詳細に調べました。直線偏光や円偏光、色などの観測情報について、画像上の相関関係を世界で初めて詳細に調べました。これらの観測データを、塵粒子が整列している場合の理論モデルと比較して円偏光生成メカニズムを調べました。

  • 論文: T. Fukue et al. “Near-Infrared Circular Polarimetry and Correlation Diagrams in the Orion Becklin-Neugebauer/Kleinman-Low Region: Contribution of Dichroic Extinction”, The Astrophysical Journal Letters, 692巻, pp.88-91, 2009年

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